健診対象者一覧に名前がない。総務の確認順を間違えた日
健診対象者一覧に名前がない。総務の確認順を間違えた日
「協会けんぽの健診対象者一覧に、あの人の名前がない」
総務の現場で、しろまえ殿はこの相談を受けた。
そして、その場で答えに詰まった。
一覧に名前がない。
それだけで、健康診断を受けなくてよいとは言えない。
この二つを、最初から別の話として扱えていなかったからだ。
一枚の一覧表から、話がややこしくなった
きっかけは、会社で行う健康診断の確認だった。
しろまえ殿は最初、「会社員なら年に一度の健診は会社負担なのか」と考えた。
そこへ、協会けんぽの一覧に名前がない社員の話が重なった。
一覧にいない。
では、会社の健診も不要なのか。
ここで、総務の確認が一つの制度に寄りかかりそうになった。
QMクルーが見たのは、制度の名前ではなく、制度の役割だった。
会社の定期健康診断は、労働安全衛生法に基づく会社側の義務だ。
一方、協会けんぽの生活習慣病予防健診は、健康保険の補助を使える健診メニューだ。
たとえば、会社の健康診断を「全員が通る校門」とするなら、協会けんぽの一覧は「その校門で使える割引券の名簿」に近い。
割引券の名簿にいないからといって、校門を通らなくてよいことにはならない。
このたとえで、色クルーたちの中でも話がそろった。
会社の義務と、保険者の補助を分ける
まず見るのは、その人が会社の定期健康診断の対象かどうかだ。
雇用契約や勤務状況を確認し、常時使用する労働者に当たるかを判断する。
対象なら、会社の定期健診として実施方法を手配する。
労働安全衛生法に基づく定期健康診断は、1年以内ごとに1回の実施が必要になる。
法令上、事業者に実施義務がある健診の費用は、事業者が負担するものとされている。
ここで初めて、協会けんぽの一覧を見る。
一覧に載っているかどうかは、生活習慣病予防健診の補助対象を確認する材料だ。
2026年度の一般健診は、協会けんぽの案内では35歳から74歳までの被保険者本人が対象になっている。
ただし、年度やメニューによって条件は変わる。
その年度の公式案内と、加入している保険者を確認する必要がある。
法定健診の必要項目を、生活習慣病予防健診が満たしているかも健診機関へ聞く。
「補助対象だから、そのまま法定健診になる」と決め打ちしない。
費用も同じだ。
協会けんぽの補助額だけでは、社員の自己負担があるかまでは決まらない。
補助後の額、会社が負担する額、本人が負担する額を、見積書の項目ごとに分けて確認する。
総務の確認表を、三列に分けてみた
しろまえ殿がこの件で整理したのは、対象者一覧を一枚の答えにしないことだった。
確認表には、次の三列を置く。
| 列 | 確認すること | 次の動き | |---|---|---| | 会社の義務 | 雇用契約、勤務状況、定期健診の実施日 | 法定健診の対象と実施時期を確認する | | 保険者の補助 | 加入する保険者、年度、年齢、被保険者本人か | 使える健診メニューと補助額を確認する | | 受診の手段 | 健診機関、必要項目、予約、費用の分担 | 予約票と見積書を確認して案内する |
一覧に名前がない人は、「健診対象外」と書かない。
「協会けんぽの補助対象外かもしれない」と書き、会社の法定健診の対象欄は別に確認する。
この順番なら、一覧から外れた社員を、会社の健診からも外す事故を避けやすい。
個人情報を含む健診結果の通知・保存も、社内ルールと法令に沿って扱う。
確認表は便利だが、表に書いたから判断が確定するわけではない。
迷ったら、健診機関や社会保険労務士、加入する保険者へ確認する。
保険証の案内でも、似た取り違えが起きた
健診の確認を進めると、保険証の質問も出てくる。
ここでも、名前が似た書類を一つにまとめないことが大切だった。
従来の健康保険証は、2024年12月2日以降、新規発行されていない。
すでに持っていた保険証も、最長で2025年12月1日までの経過措置だった。
2026年8月時点で、受診方法として案内するのは、マイナ保険証か資格確認書だ。
まず、マイナンバーカードを健康保険証として利用登録しているかを確認する。
使わない場合は、加入する医療保険者から資格確認書が交付されているかを見る。
「資格情報のお知らせ」は、資格確認書と同じものではない。
書類を持っているだけで受診できると案内しない。
転職、扶養変更、退職などで資格が変わった場合は、勤務先の担当者だけでなく、加入する保険者への確認が必要になることもある。
資格確認書が届かない場合も、誰に聞くべきかまで案内する。
あの日、答えられなかった理由
しろまえ殿が最初に答えられなかったのは、知識が足りなかったからだけではない。
健診を一つの制度として見ていたからだ。
法定健診は会社の義務。
生活習慣病予防健診は保険者の補助。
マイナ保険証と資格確認書は、医療機関での資格確認に使う受診手段。
似た言葉を、別の列に置く。
これだけで、総務の確認はかなり進めやすくなる。
しろまえ殿は、社員から聞かれたときの順番も変えた。
「協会けんぽの一覧に載っていますか」から始めない。
先に「会社の定期健診の対象ですか」を確認する。
次に「協会けんぽの補助対象ですか」を確認する。
最後に、どの健診機関で何を受けるかを決める。
保険証の相談なら、マイナ保険証か資格確認書を使える状態かを聞く。
その場で全部を断言しない。
確認すべき相手と資料を示す。
総務の仕事では、その一手が一番大事なこともある。
この記事は、しろまえ殿が実務の疑問を整理した記録だ。
制度や対象者、費用は変更されることがある。
実際に案内するときは、厚生労働省、協会けんぽ、デジタル庁、健診機関、会社の規程など、現行の公式情報を確認してほしい。
参考にした公式情報
- 厚生労働省「職場のあんぜんサイト:定期健康診断」
https://anzeninfo.mhlw.go.jp/yougo/yougo51_1.html
- 全国健康保険協会「健診について(被保険者)」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/health_promotion/health_checkups/insured/001/
- 全国健康保険協会「令和8年度 生活習慣病予防健診対象者年齢一覧表」
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/file/r8nenrei.pdf
- デジタル庁「資格確認書(マイナ保険証以外の受診方法)」
https://www.digital.go.jp/policies/mynumber/insurance-card/optional-insured-status
- デジタル庁「よくある質問:マイナンバーカードの健康保険証利用について」
https://www.digital.go.jp/policies/mynumber/faq-insurance-card