『もう使える』はずのスキルが、実は入っていなかった話
『もう使える』はずのスキルが、実は入っていなかった話
朝礼の運用ルールを、少し変えることにした。
しろまえ殿は、その変更をAIとの会話の中で記憶させた。
「これでもう、本運用に移行した」
そう思っていた。
数日後、対応するスキルの手順書そのものを直してほしいと頼んだ。
すると、思わぬ答えが返ってきた。
「記憶にある」ことと「実体がある」ことは別
しろまえ殿が使っているAIサービスには、Skills(スキル、決まった作業の手順書をAIに読み込ませる機能)がある。
あらかじめ手順書ファイル(SKILL.md、手順の中身をMarkdown〈見出しや箇条書きを簡単な記号で書ける文書形式〉で書いたファイル)を用意しておくと、それを読み込んで、決まった作業を再現してくれる仕組みだ。
会話の中の記憶(メモリ、過去のやり取りをAIが覚えておく機能)には、「このスキルは本運用に移行済み」と書いてあった。
ところが、実際に手順書ファイルを修正しようとすると、コードを実行する作業スペースの中に、そのファイルの実体が見当たらなかった。
しろまえ殿は、ここで初めて気づいた。
「本運用に移行した」という記述は、あくまで会話の中の記憶でしかない。ファイルの実体が、今使っている作業スペースにきちんと置かれているかは、別の話だった。
たとえば、社内の掲示板に「新しいマニュアルに切り替えました」と書いてあっても、現場の棚に肝心のマニュアル本体が届いていなければ、誰も新しいやり方では動けない。掲示(記憶)と、現物(実体)は、別々に確認する必要がある。
原因は3つ考えられた
しろまえ殿は、なぜこのズレが起きたのかを整理させた。
考えられる原因は、大きく3つに分かれた。
1. 設定画面には登録されているが、コードを実行する作業スペースそのものには読み込まれていない。 2. ファイルとして保存されず、記憶の中にだけ存在している。 3. 別の場所に保管されたままになっている。
どれが正解だったにせよ、共通するのは「記憶上は完了扱いなのに、現物が伴っていない」という状態だった。
直し方は、作り直すか、入れ直すか
対処自体はシンプルだった。
既存のスキルファイルを、あらためてアップロードして修正するか、チャットの中でスキル作成の仕組みを使い、手順書を丸ごと作り直す。
しろまえ殿は、後者を選んだ。
作り直す際は、どんな言葉で呼び出されたいか、どんな形式で出力してほしいかを先に決めてから書き始めるようにした。順番を逆にすると、後からの手戻りが増えることが分かっていたからだ。
気をつけたいこと
- 「記憶している」ことと「実体としてファイルが存在する」ことは別のレイヤーの話だと意識する。特に、運用ルールを変更した直後は、対応するファイルの実在を確認する習慣をつけるとよい。
- スキルは、取り込んだアカウント単位でクラウド同期(サービス側のサーバーにデータを預け、複数の端末から同じ内容を呼び出せる仕組み)される。自宅の端末で取り込んだものは、別の端末でもそのまま使えた。
- 配布用のスキルファイルは、フォルダの中にSKILL.md本体が入った構造でないと、取り込みに失敗しやすい。
- スケジュール実行(あらかじめ決めた時刻に自動で処理を動かす仕組み)のような自動化タスクは、手元のパソコンのローカルフォルダ(パソコン本体の中に保存されたファイルの置き場所)には触れられない仕組みになっている。手元のファイルを扱う自動化は、パソコンが起動している前提の別の仕組みに頼るしかない。
「AIに任せれば、あとは全自動で回る」
そう思いたくなる場面ほど、しろまえ殿はまずこうした構造上の制約を確認するようにしている。記憶と現物、両方を見て初めて「移行済み」と言える。